いま ここは?

若くしてなくなった政治思想史の坂本多加雄さんの用語に、来歴という言葉がある。

当人自身が「自らを語る物語」の意だが、坂本さんは個人の範疇から国家にまでおしひろげて、『天皇論-象徴天皇制と日本の来歴-』の一冊をのこした。

国家の歴史(事実に基づいた客観的な検証)、国家の物語(伝承語りのためのフィクション)、国家の来歴(主観的な自己認識としての筋)と、自己流に整理しながら、ふと「アングラ」にまつわる歴史、物語、来歴というような応用編が思い浮ぶ。

この秋に上演する新作『演劇島』のために、60年前のデビュー作『無給の殺し屋』(ウジェーヌ・イオネスコ)から、座・高円寺レパートリーとして上演した『戦争三部作』『男たちの中で』(エドワード・ボンド)まで、演出にたずさわった50本を越える海外戯曲の山に分け入る日々。

劇場の「今日、只今性」(渋谷天外)にふさわしく、自分よりも3世代(もしかしたら4世代)下にまでおよぶひろい層の観客と向き合うはずの(それを期待し、切望している)新作準備のなかで、あらためて思いをめぐらす「アングラ」の歴史、物語、そして来歴の近さ、そして遠さ。




佐藤信の五行日記

小人閑居為不善 うつけもの ひまのまのまの だだあそび

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